「メルサカ 2025」で考える
3月にメルボルン(オーストラリア)をスタートした「MELBOURNE OSAKA CUP Double-Handed Yacht Race 2025」(以下、メルサカ 2025)。
フィニッシュ地点の大阪では、「EXPO 2025 大阪・関西万博」が4/13(日)に開幕。
トップ艇〈Zero〉がその舞洲にフィニッシュしたのが4/15(火)08:18という、なんだかもうメディアにとってはドラマチックな展開……のはずなんですが、テレビでやってました? 朝の情報番組で万博宣伝を兼ねて生で流すのにちょうどよさそうだったのですが。
我が家にはテレビがないもので……いや逆に、盛り上がっている映像ならyoutubeで流れると思うのですが、探せませんでした。
スタート映像は公式にあるんだけどなぁ。
大会webサイト(日本語版)は→こちら。
▌ハンディキャップ戦を楽しむには
前回の記事で書いたように、このレースはハンディキャップ戦です。
まあ通常のアマチュア・ヨットレースイベントはだいたいハンディキャップ戦で、レース中は誰がリードしているのか、どの艇が追い上げているのか、レース展開が分かりにくいのです。
そこにもってきて、「メルサカ2025」はスタートが4回に分かれているので所要時間すら分かりにくいし。
いや、参加艇の性能差が大きいので、スタート日をずらすというのはアリだと思うのですが。その分、レース途中の暫定順位をしっかり出さないと、観戦者側は手に汗握りようがありません。
たとえば、
“ラインオナー”というタイトルは通常「最初にフィニッシュラインを切った艇」というイメージなのですが、スタート日がバラバラな「メルサカ 2025」では“所要時間の最も短い艇”という設定なので、最初のスタートからなんと28日後にスタートした大型艇〈Alive〉(Reichel/Pugh 66)にチャンスあり……というか1艇だけ飛び抜けて速い艇なので、リタイアしない限りまずファーストホーム間違い無し。
しかし、トラッキングのページではファーストホームは〈Zero〉の記載になっておりまして。しかし「これは正式のものではありません」との但し書きがあり……。
修正順位は以下、
• ORCi
• Australian Measurement System (AMS)
• Performance
3つのカテゴリーに分かれていて、艇の大小によるクラス分けはありません。
で、それぞれの修正係数TCFは……出てないんですよね。
トラッキングページには修正順位も出てくるのですが、ファーストホームの表示があきらかに間違っているわけで……。修正順位もどこまで信じて良いのか……。
▌〈Alive〉の圧勝
4/24(木)にはあらかたフィニッシュ。
ここで、「日パラ通信」の記事もアップしようと思って書いたことは書いたんですが……まだ成績が出ないのでボツに。
5/2(金)に表彰式があったのでしょうか? この頃、公式webサイトにも成績がアップされました。
ファーストホーム、ORCi、AMS、Performance、全てで最大艇〈Alive〉(Reichel/Pugh 66)の優勝という、スゴイというかシラケル……なんて言ったら失礼か。すいません。素晴らしいです。オメデトウございます。
フィニッシュの写真もfacebookに出てますね。
〈Trekkee〉のフィニッシュ映像なんか、放水艇での盛大な歓迎を受けたようで、動画で流せば万博の宣伝にもなりそうなのに。もったいないなぁ。
いや、どこかで流していたのか? すいません。
なんかもったいないなぁと思ってみてたのですが。
いやいや、そうじゃない。1984年の第1回から延々と続いているこのレース、オーストラリアの南にあるメルボルンから大阪まではタップリ5500マイルあり、ここを2人で走り切るというのは参加艇からしたらかなりの覚悟が必要だと思うわけですよ。時間もお金もかかるし。よっぽどの魅力がないと出場しようとは思わないでしょ。それが、第9回となる今回も17艇の出場って、やっぱりすごいな、と。
そのあたり、レースの主催者側として学ぶべきことがあるのかなと思いまして、この稿を書いてます。
▌分散スタート
1つのポイントは、4回に分けてスタートしているところ。
フィニッシュに大きな差がでないようにということで、他にもこうした分散スタートの例はありますが、大変参考になります。
さらに進めて、ハンディキャップ順にスタートして着順勝負する、ということも考えられます。
今回は3つのカテゴリーすべてがタイム・オン・タイム(ToT:所要時間に修正係数を乗じて修正時間を出す)なので、ハンディキャップ差はフィニッシュしないと出てきません。
しかしORC-iは別にタイム・オン・ディスタンス(ToD)、つまりコース距離に合わせて修正タイムを算出する計算方法(スコアリング)もあるので、ハンディキャップに合わせてバラバラにスタートし着順勝負というレースも可能です。
スタート時点の気象状況で有利不利が出てしまいますが、それは同時スタートでも同じ。フィニッシュ時点での天候によって有利不利ができてしまうのだから。
なにより、スクラッチのフリートを集めるのが難しいアマチュア・イベントで着順勝負を楽しむならこれもアリということです。
とはいえ、1艇1艇バラバラのスタートではレースコミティーの手間が増えるわりにスタートが盛り上がらず……。だって夜中にスタートする艇もあるんですよ。1艇だけで。
そのうえ、着順勝負だと盛り上がるかというと、これだけの距離を走るとフィニッシュはかなりばらけますから。一斉スタートで着順勝負の「ヴァンデグローブ」もフィニッシュはかなりバラバラなわけで。
と、「タイム・オン・ディスタンスでハンデ順にスタートして着順勝負」にすると、スタートもフィニッシュもどちらも盛り上がらないということになりかねないわけで……。
今回の「メルサカ2025」で採用された4回に分けたスタートというのは意味あるな、と思いました。
ただこれも、当初は3回のスタートだったようです。
極端に遅い〈CURIOUS ROO〉(S&S 34)[PHS:0.760]、と、極端に速い〈ALIVE〉(Reichel/Pugh 66)[PHS:1.3500]。それ以外のメインフリート。……の3回。
なんですが、何故か急に第2スタートのグループができたようで。
それも、第2グループでスタートした〈Zero〉(Imx-40)[PHS:0.9490]の8日後にスタートした第3グループにPHSのより小さい〈MAGELLAN〉(Knoop 39)[PHS:0.8890]がおり、それもレース中は修正係数が分かっていない観戦者がからするとさっぱり意味不明のレース展開となったわけです。
と、なんだかこのレース運営どうよ? と思いながら見ていたのですが、いやいやまてよ、と。
こうした緩(ゆる)い設定──スタートする日は好きに決められる──で、修正係数も正式に公表しない。レース中の途中経過はイイカゲン。……なところが逆に、イベントが長続きしている要因なのかな、と思ったりして。
長距離外洋レースではエントリーの敷居を下げるために、「クルージングクラス同時開催」して「フィニッシュ地点でランデブー」みたいなことをいろいろと考えたりするわけですが。そこはレースそのものを“良い加減”に緩く実施することで、勝敗に関係無く楽しめて完走する充実感が得られるイベントにできるのかな、なんて、思ったしだいで。
筆者は自分がそういう緩いイベントには興味なくて、レースはキッチリ開催してもらいたい。のんびりした航海は回航で味わえばいいじゃん派なもんで。緩いレースは許容できなかったのですが……。
最終成績はこちら。
ラインオナーは確かに〈ALIVE〉の圧勝ですが、修正の方はかなりの接戦です。
予め修正係数を公表してレース途中で暫定成績を日々更新していけば、もっと楽しく観戦できたはず。とは思いますが。
▌残す……努力
実は筆者は「メルサカ1999」では主催者側でお手伝いしてまして、そのとき「メルサカ1995」と2冊、『公式記録集』をいただいて、今も手元にあります。
今回この記事を書くにあたり、引っ張り出してきたのですが、ペラペラめくって見るに“記録に残す”というのは極めて重要であるなぁ、と。
A4版カラー、ハードカバーの136ページ。お金も手間もかかってますよぉ。
今なら公式webサイトということになるのでしょうが。やはり公式な記録を残しておくというのは極めて重要なんだな、と再認識しました。
で、この「日パラ通信」も、「日本-パラオ親善ヨットレース」の公式記録集の一部として存続しているわけで……。