悠パラ日記【25】パラオの部活事情

(2024/05/15)仙田悠人

相手を知る
僕のコーチ・普及するという立場でパラオについて最初にリサーチしようとしたことは、相手を知るということすなわち「パラオの部活動の現状」でした。パラオという屋久島大の大きさの国にどのようなスポーツができて、子供たちはどのように勤しんでいるのか、これを知ることから始めたのです。

パラオで習えるスポーツ
パラオで習うことのできる主要スポーツは以下の通りのようです。
野球・スイミング・陸上・柔道・テニス・ピアノ・カヌー(大人向け?)・アーチェリー・レスリング…他にも大人向けのスポーツでバスケットなど。

この人口1万8千人で少子高齢化、屋久島ほどの大きさで、ジャングルや湿地帯が国土の多くを占める国でこれだけのスポーツを習うことができるんだ!と感心すると同時に、同業他社はたくさんいるんだと競争率の高さを感じました。日本など人口が億の単位になるほど多い国からすれば彼らはアスリートとしてのチャンスを獲得する機会は多く、スポーツに勤しむべき環境なのかもしれません。また、秘めたポテンシャルを感じる彼らは身体能力が高く、体つきが日本人とはまた違うので伸び代ばかりなのです。

中でも野球はパラオの国技に指定されているので純パラオ人がしっかりと関与する盛んなスポーツになっています。球場も旧アサヒ球場という呼ばれ方の球場がありますし、現在でもきちんと整備されています。また、JICAの先輩隊員も野球指導のために派遣されているほどの徹底ぶりです。パラオ人の小学生児童人口は約600人ほど。

パラオで野球と同じ地位に並べるかはこれからの僕や後任の方々の腕次第というところにかかっています。

パラオ人の習い事に対する価値観
パラオ人の習い事に対する価値観は日本人のそれとは全く異なるものです。まず、習い事は日本人は行かなければならないものですが、パラオの子たちは行きたかったら行くといった考え方。また、パラオ人にとってシューカン(パラオ語化した日本語で冠婚葬祭のこと)や家族に関することが第一優先なのでしょっちゅう練習に来られない時がある。そして競争を嫌う子供達もいるほど、競争というものが根付いていないのでスポーツとして継続的に習い事をする純粋なパラオ人の子は少ない。

また、親としては多くの純パラオ人の家庭で子供のスポーツに対してお金をかけるという考えがないそうです。少しでもお金がかかってしまうとスポーツをすることに負担を感じてしまうのでしょうか。

日本人の価値観がいいということではなく、ひとえに国民性なのでしょうか。この事実を知って文化の違いを思い知らされました。なぜこのような価値観になっているのか、いろいろ調べましたが、本稿ではそこまで踏み入りません。

パラオ人のスポーツ現状
パラオ人のスポーツ人口は10年前に比べて少しずつだが増加傾向にあるといわれています。道端で走る人が増えたなど、健康志向の考えが少しずつ広まっているからでしょうか。世界2位の肥満率を誇るパラオに、スポーツで健康的な体型を維持するという発想は素晴らしいものです。PNOC(パラオオリンピック委員会)の長も世界中を駆け巡って奮闘中の日々のようです。

しかし、各々の組織の努力の裏にはもちろん苦難もあるようです。各スポーツ団体組織の構成員の数が足りないことからスポーツ毎にそれぞれ問題を抱えているようです。例えば、国外遠征の旅行目的化や純パラオ人が入らないことなど我々PSAにも通ずるような判例としてお話を聞いているところです。

相手を知って
いくつかのスポーツを知って、パラオにどのような形でセーリングを展開するべきか模索しています。現在までで思いつくのは、パラオ人の子供に入ってもらうように画策しているのは、「地域のお兄ちゃんになるプロジェクト」です。このパラオでは公にスポーツを正面から広げるというよりも、地元の子供との関係性を地道に築き上げて練習に勧誘することが大切なのではと思っています。なので、まずはセーリングからでなくとも子供と一緒になって遊び、地域に受け入れてもらうお兄ちゃんになれることを目標にしていく活動をしていこうと考えます。地域に根ざした団体を目指して活動すると、PSAの繁栄・日本と草の根レベルでの交流につながるのではないでしょうか。