悠パラ日記【33】アウトリガーの多様性

(2024/08/19)仙田悠人

パラオで作られているアウトリガーはそのほぼ全てがソンソロール州・ハットビ州(以下、南西諸島とする)出身の人々が作ったものです。余談ですが、日本の三重県にパラオから寄贈されたアウトリガーもソンソロール州の作り手が製作したもの。

(Pacific Island Nations Weeksにて展示されたWa talaghiと笹川平和財団に寄贈された模型)

私はしばしばアウトリガーの話になると、南西諸島の人々をパラオ本島に元々住んでいた人々と切り離してお話しします。その理由はアウトリガーに関しては作り方が違うのです。パラオ本島スタイルはバウ先に繋ぎ目があって角形になっています。一方で、南西諸島のスタイルはバウ先まで全て一本の木で構成され、綺麗な流線型になっているということです。(他にも細かく見ていけば違い多数)

来る9月29日にはパラオ初めてのセールを伴うアウトリガーのレースを予定しています。これに伴って、エントリーリストを作る観点から参加艇を調べる際に多様性があることを知りました。伝統維持型、最新型などやはりセーラーとして船をメンテナンス・改造してこだわりの艇に仕上げているようです。艇種は違えど、日本のセーラーと考えることは同じ!!!親近感しかありません!!

本島と違いがあることを伝えながら、パラオに現存するセールを伴うアウトリガーは南西諸島のタイプのみ。この非常にニッチなスタイルの違いを今回はシェアしていこうと思います。(悠パラ日記だからできること)

クラン(家系)ごとに作り方やスタイルが違って、面白いなという楽しみ方です!!

種類の多様性
まず、アウトリガーにはサイズによって分類があります。

Wa Sao demaru, (1人 釣り用)
Wa fatur, (2人-3人 釣り用)
Wa talaghi,  (3-4人 釣り・旅客用)セールあり
Wa turu, (6-7人 夜飛魚釣り・採る用)セールあり
Wari Wayi,  (8人以上の大人数 外洋航海用)セールあり

この中でも、Wa talaghiが今回のレースで使われる艇です。Wa talaghiの定義は広く、セールがついていれば該当するという人もいるほどなんです……。したがって、今回写真で使用するのは全てWa talaghiです。

(左Wa Sao Demaru、右Wa Fatur)

出場艇
まずは出場艇(Wa talaghi)を見ていきましょう。(全5艇のうち4艇)
One Design規格があるわけではないので、少しずつ大きさが違います。

橋渡し(Taotao)
アウトリガーの小さな船体の方にこのような穴を開けて橋渡しの材料とむすびつけています。

船体の左右差
左右を丸くするか、平にするかどうかもクランによって微妙に違うみたいです。

最新の艇のアイデアは小さい方の船に穴を開けて、その中を発泡体で埋めてしまうというやり方でした。海の男の工夫はつきません!!

余談
船を削り出す際のEbakl(エバクル)にもこだわりがあるそうです。
ダイヤモンド型にロープの装飾ができるのは数人しかいないとか。。。

このような各クランの違いの一番素晴らしいと思うところはなんだろうか。ズバリ、レースもないのに常に整備し続けて、早くなるように改造している所有者たちの自艇愛だと思います!!今やカヌーで釣りに行く人はほとんどいません。家の船をメンテナンスし続けるこの人々の情熱をどうにか昇華できる場所は…、そんなことを思っていいます。
加えて、セールを確保するのが難しいようなのでそういった支援できそうな(日本のセーラーに中古セールをと呼びかけてみる等)ことは支援できたらいいなと考えています。

今週もご一読ありがとうございました!!