悠パラ日記【その2】日本パラオ親善レース

2023/04/04

一羽のニワトリが日の出を告げると、周辺の野良の鶏も連鎖して朝がきた喜びを伝え合う。鏡のようなベタ凪の海に彼らの声だけが響き渡り、今日も一日、南国パラオの朝が始まった。
日々、眩しいほどにこの世界は輝く。その輝きの権化の如く、外で遊び生き生きとした笑顔を見せる子供達。この明るさは、当然にカメラ越しに伝えきれない。
パラオの景色を眺めるだけで優しい心になる。さらに、おおらかな時の流れに身を置けば、せわしない日本で悩んだ全てのことがちっぽけなものであったと感じる。
一体この縁はどれほどの影響を与えてくれるのだろう。

こんにちは、パラオに滞在している仙田悠人です。先週の活動報告をさせて頂きます。

4月1〜2日は日本パラオ親善レースが開催されたました。
そこで、先週一週間の練習目標は、レースの右も左もわからない子供達に、レースとはなんたるかの雰囲気を掴んでもらうことでした。スタート前のフラッグの意味や、アップウィンドの走らせ方、マークの周り方など、基礎から学んでもらいました。
スタート前信号旗を学ぶ際には、2人づつクラス旗とP旗を手で掲揚して復習して貰いました。彼らの無邪気な笑顔が旗で見え隠れする様子や、挙げる旗を間違えて照れながら見えた笑くぼがとても可愛らしく思ました。

レース当日は朝から保護者の方が沢山手伝ってくださってコンテナから16艇もの船を運び出す作業から始まりました。それぞれが自分で艤装してできるようになったのはとても大きな進歩です。僕がパラオに来た二週間前には1人での艤装は出来ませんでしたから、彼らの成長には毎週驚かされます。
1レース目がはるか遠く日本の方角から吹く北風で親善レースが始まったことに不思議な縁を感じざるを得ませんでした。1日目のレースは2019年までヨットをしていた子が安定的に前を走る一方で、今年から始めた子も負けじと追いかける展開が続きました。
一方で2日目のレースは、マーク設定を変更したこともあって初心者の子でも活躍する場面がグッと増えました。普段の練習ではヨットを怖がって、浮かない顔をしている子も「今日はすごく楽しい!」と言ってくれたのでレースの楽しさを体感してもらえて嬉しく思いました。結果は日本から来た子が一位でしたが、2位は1ヶ月前に始めた子だったので教え子の活躍に鼻が高くなる思いでした。

なお、今回のレースで一番嬉しかった嬉しかったことはレースの結果ではありません。今回、一番嬉しかったことは1人も途中でリタイアすることなく走り切ってくれたことです。数人の子は、スタートを失敗して艇団から大きく離された結果、涙してしまうことがありました。ヨットを始めて二週間でレースに出るのですから、経験者の子に負けてしまうのは当たり前といってもいいことです。けれども、彼らなりに課題点を見つけ、ある子は悔しさをバネに「僕はパラオで一番のヨット選手になる!」とまで明言してくれました。ヨットレースの残酷な面を体感してもなお、ヨットに対する情熱を再燃し、ヨットに対する思いを表現してくれたことが一番嬉しかったことでした。

表彰式では、恥ずかしがりながらも記念のトロフィーを前に出て1人ずつもらい、日パお互いの健闘を讃えあう姿をみて、二日間のレースを開催して本当に良かったと思いました。表彰式後には、パラオの魚やハンバーガーを振る舞うブースを現地の方が開催してくれたので、子供達とみんなでBBQをいただきました。片付けも忘れて僕のバディのアモスが食べ続けたほど、疲れ切った体に、とても美味しい海の幸の味が身に染みました。そして、どこの国の子供も美味しそうにご飯を食べる姿は微笑ましく、沢山食べて大きく成長して欲しいなと願うのでした。

日本パラオ両国、たくさん関係者の方と多くの支援があってこそ開催されたレースでした。日パ両国の子供たちに笑顔をもたらせた本レースは大成功を収めたといえると思います。子供達や私は支援に感謝しながら活動ができる喜びを十分に理解しなければなりません。本来直接申し上げるべきところですが、今回は文章という形であることご理解ください。Palau Sailing Association を代表して御礼申し上げます。
いつもありがとうございます。
今後とも、パラオでセーリングの活動を通して子供達の笑顔を生み出せるよう、暖かい目で遠く日本から見守ってくださいますことをお願い致します。

Yuto Senda