ヨットで南洋を巡る -ミクロネシア編
来年(2024)3月に横浜をスタートするパラオレース。正式名称は「日本-パラオ親善ヨットレース 2024|Japan-Palau Goodwill Yacht Race2024 」。»Click
パラオでフィニッシュした後沖縄を目指すレースも企画されていますが、「いやー、パラオまで1,700マイルも走れば十分デス」という方はレース後パラオから南洋の島々を巡るクルージングに出るというて手もあり。
ということで改めて、南洋の島々をヨットでクルージングする前提で見てみると……。
ミクロネシアの島々
南洋庁パラオについては、こちら日パラ通信でたびたび取りあげてます。
かつて南洋群島と呼ばれた島々-ミクロネシア(Micronesia)-は、
北から、
マリアナ諸島
カロリン諸島 マーシャル諸島
ギルバート諸島 フェニックス諸島 ライン諸島
と、ギリシャ語のミクロス(μικρός 小さい)ネソス(νῆσος 島)の通り、小さな島々が広大な海に広がって構成されています。
まずはマリアナ諸島。
グアム、サイパン、テニアンと飛行機の便も多くお手頃な観光の島々なんですが……。ヨットの泊地としてはイマイチ。台風も多く、クルージングの中継点としてならまだしも、クルージングの目的地として何週間も過ごす泊地としては魅力に欠けます。
マリアナ諸島の南にはカロリン諸島(Caroline Islands)が東西に広がっています。今回のレースの目的地パラオ(palau)はその西の端、東経134度30分ですから、日本から見ると四国の真南にあたります。
パラオ島というのはなくて、パラオ共和国(Republic of Palau)という独立国の国名です。
首都のマルキョク(Melekeok)はバベルダオブ島(Babeldaob)に。今回のレースのフィニッシュ地点はその南に橋で繋がったコロール島(Koror)になります。首都移転まではこちらがパラオの中心で、今も繁華街といえばこちら。
パラオの北東約250マイルにあるヤップ島(Yap)から先は同じカロリン諸島でも行政区画としてはミクロネシア連邦(Federated States of Micronesia)と別の国になります。
サタワル島(Satawal)
チューク諸島(Chuuk Lagoon:旧称トラック諸島)
ポンペイ島(Pohnpay:旧称ポナペ島)
コスラエ島(Kosrae:旧称クサイ島)
と続きます。
首都はポンペイ島のパリキール(Palikir)で、北緯6度55分/東経158度9分。その北にある旧首都のコロニア(Kolonia)の方が町としては栄えている……ってのはパラオと似ています。
国名に“連邦”とあるように、ヤップ、チューク、ポンペイ、コスラエはそれぞれ州として独立した行政組織になっているもよう。ここだけでも、日本列島でいえば北海道と九州くらい離れてますからね。
大環礁にて
カロリン諸島のさらに東にマーシャル諸島があります。
こちらも行政区分としては「マーシャル諸島共和国」と別の国になります。
そもそも、珊瑚礁の島は、
裾礁(きょしょう)Fringed Reef
↓
堡礁(ほしょう)Barrier Reef
↓
環礁(かんしょう)Atoll
へと進化というか発展というか、いや島としては劣化なのか。とにかく長い年月をかけて変化していきます。
こちら↓の解説が分かりやすいです。
この地形的な特徴を理解しておかないと、珊瑚礁の島をヨットでクルージングする計画は立てられません。
で、マーシャル諸島を構成する島々は主にこの最終形態である環礁(Atoll)で、首都のあるマジュロ(Majuro)も64もの島々からなる大きな環礁です。
対して、たとえばポリネシアのラロトンガは典型的な堡礁で、広いラグーンの中にある島の入り江は絶好の錨泊地となるわけです。
では、はたしてクルージングヨットの泊地として環礁はどうなのか?島陰が無いわけですから。
かつて帝国海軍の戦艦大和もトラック島の環礁内に停泊していたようですから大型船の錨地としては良いんでしょうが。小型ヨットの場合、たとえば、東京湾の京浜港で一般商船用の検疫泊地に一晩錨泊させられたことがありますが、うねりが入って居心地は最悪でした。
はたして、ミクロネシアの広大な環礁はヨットのクルージングでの泊地になるのか否か。
で、クルージングの記録を探してみたのですが、こちら
ふむふむ、けっこういけそうですね。というか錨泊適地はけっこうありそう。
この方たぶんオーストラリア人。家財道具一式を売り払ってヨットを買い、旅に出た。冒険者ですなぁ。
まあ経済的に考えると、ヨットは最後は売れば良いし、航海中はマリーナへの係留費もいらないわけで。当然家はいらないから家賃も無く、ほぼ自炊、とお金はあまりかかりません。なんともリッチなホームレス。インターネット環境を整えればヨットの上で仕事もできる。
ヨット経験ゼロだったとのことですが、今はGPSがあるのでナビゲーションは難しくないし、こちら、カロリン諸島からマーシャル諸島にかけてはグアム~サイパン等のマリアナ諸島よりも低緯度のため台風のリスクはぐっと少なくなります。その分しょっちゅうスコールはあるかと思いますが。小さな島で台風の直撃をうけるとたいへんですから。特にグアムのあたりではいきなり台風ができて襲ってきますし。
キリバス
さらに南に下れば、ギルバート諸島。
ほぼ赤道上になりますが、ここから東へ、フェニックス諸島、ライン諸島と続く東西2,430マイルにも及ぶ広大な海面に広がる小さな島々で構成されるのがキリバス共和国。
首都はギルバート諸島のタラワ(Tarawa)で、北緯1度36分/東経173度00分。
東端のライン諸島、キリスィマスィ島 (Kiritimati)またはクリスマス島 (Christmas Island)と呼ばれる島まで、キリバス共和国は続くわけですが、これが北緯1度42分/西経157度21分。ということはハワイと同じ経度でガチの西半球。つまり、キリバス共和国は日付変更線をまたいでその領土というか領海が続くので、ここだけ日付変更線を東にずらして利便性をあげています。なんかイイカゲンというか。かえって混乱しないのかとも思いますが。
キャプテン・クックがこの島を見つけたときは無人島だったようで、今はミクロネシアのギリバス人が住んでいるものの地理的にはポリネシアになるそうで。
となると、ヨットでギルバート諸島まで来るなら、いっそポリネシアを巡航したくなりますね。
そうか、日本から出てポリネシアを攻めるなら、ハワイ経由よりミクロネシア経由でポリネシアに至るルートも合理的といえるかと。
ポリネシアとミクロネシアの違いはこちら
ヨットでクルージングといったら南太平洋。で、やっぱりポリネシア。
こちらミクロネシアは核実験の負のイメージがあるのか。クルージングガイドを探してみたのですがほとんどないですね。
こちら、『WORLD CRUISING ROUTES』(Jimmy Cornell)という本なんですが。メインのルートからミクロネシアは外れています。
核実験なんて100年近く前のお話で、今は昔。逆にいえばクルージングの目的地としてはまだまだ開拓の余地があるということ。開拓する楽しみがある魅惑の海域ということ。
とりあえず足を踏み入れてしまえば現地で出会うセーラーとの茶飲み話で泊地情報を得られると思うので、それを元にあとは野となれ山となれ。……って海ではなんというのだろうか。うん、これぞ冒険航海なんじゃなかろうか、と。
「wordl cruising & sailing WiKi」なんてページありましたけど。
»Click
ミクロネシアのクルージング情報はこの後もいろいろ探してみます。見つけたらここに書き足します。
というところで、次回はかつて西欧の海洋覇権国が大航海時代に目指した香料諸島(今のインドネシア)──つまり表南洋のクルージングについて、考察していきたいと思います。