Day10(20240319):残航距離500海里を切り、いよいよクライマックスへ


スタートから10日目を迎え、いよいよレースは最終章にさしかかってきました。
上は、2024年3月19日19:40現在の位置情報です。横浜からパラオまで、実にその距離1,726海里の長い航程ですが、レースを続ける〈Zero〉(山田克弘オーナー:緑)と〈1122トレッキー:ピンク〉(新田 肇オーナー)の2艇の位置は、フィリピンの東にまで進みました。

今朝、2艇のパラオのフィニッシュラインまでの残航距離は500海里を切り、すでに全航程の2/3を走り切ったことになります。

 


19:40現在、〈Zero〉は残り413海里、〈1122トレッキー〉は残り441海里と、今日1日を通じて7~9ktの速度で順調に足を延ばし続けています。
特に〈1122トレッキー〉は、一時は絶望的な差を〈Zero〉につけられたものの、今日はときに10ktに迫る速度で猛追。トラッキングシステム上での2艇の差は30海里弱まで縮まってきました。
レースの最終盤で、〈1122トレッキー〉がついに先頭に立つのか、あるいは〈Zero〉がスタートからのトップをキープしてフィニッシュラインを切るのか、まったく目が離せない展開となってきました。
ちなみに両艇にはハンディキャップ差があるため、〈1122トレッキー〉は〈Zero〉を抜いたうえで、ある一定の時間差をつけてフィニッシュしなければ、優勝を手にすることはできません。

 


船速トレンドの図の一番右が本日の2艇の速度変化。ピンク色の〈1122トレッキー〉が、常に緑の〈Zero〉よりよい速度で走っていることがよくわかります。

 

陸上から遠く離れた海上でレースを続ける各艇の位置を、常に把握することができるため、多くの人たちが24時間ほぼリアルタイムにレースを見守っていることかと思います。

この装置は、古野電気さんの協賛による「ichidake(イチダケ)」のサービスのおかげです。レース艇3艇に加え、パラオへの航海をおこなっている帆船〈みらいへ〉に、GPSによる位置情報を自動発信する装置を設置。ここから発信される情報が特設サイト上に展開されていくという仕組みです。

このようなシステムは他にもいろいろありますが、「ichidake」が優れているのは、給電を本体のソーラーパネルによって賄っているという点。バッテリーの交換の必要がないというのは、何より心強いこと。参加者の負担も減ります。
しかも、陸上から各艇の装置のバッテリー残量を確認することもでき、通常は30分に1回の発信間隔を、短くしたり長くすることも可能となっています。

 


こちらは3月16日にトラブルのために小笠原の父島・二見港に緊急入港した〈パルマII〉のトラッキング情報。このときは陸上側で同艇の位置情報発信間隔を10分に1回に変更。レース委員会では、同艇の動向を常に把握することで危険な際にはすぐに連絡できるようにし、小笠原ヨットクラブの菅野 修さんの協力も得ながら、安全に寄港までを見守ることができました。

レースを見守るたくさんの人たちと同じように、レースを安全に運営するサイド(実行委員会、レース委員会)としても、遠く離れた海上を走るレース参加艇の動向を常に把握できるということは、大きな意味があります。1日1回のロールコールにつかう衛星トランシーバー(アイコム様協賛)と併せて、このレースを安全に運営する上で、なくてはならないアイテムです。

 

各艇に設置された「ichidake」の端末。この小さな機器が、遠く離れた外洋にいるレース艇の位置情報をしっかりと伝えてくれると思うと、感慨深いものがあります。

 


古野電気さんは、2017年の小笠原ヨットレース(主催:JSAF加盟団体外洋三崎)の際に、実行委員会からの相談に応じて、トラッキングシステムを独自に作り上げ、プロトタイプを提供。
以来、沖縄-東海ヨットレースや辛坊治郎さんの太平洋横断航海、そして前回の日本-パラオ親善ヨットレースなど、外洋セーラーの挑戦に対して積極的にサポートを続けてくれています。
上の写真はプロトタイプの機器ですが、製品化された現在の「ichidake」とは異なり、筐体も大きく、バッテリーも交換が必要で、もちろん陸上から発信間隔を変えることもできませんでした。

位置情報を確認する画面のほうも、過去にはなかったさまざまな情報を見ることができるようになり、大きな進化を遂げています。

他のスポーツとは異なり、外洋レースでは、競技の様子を一般の人が見ることはなかなかできません。そんな新しい外洋レースの楽しみ方を、古野電気のトラッキングシステムが広げてくれたことは間違いありません。

早ければ3月22日(金)にも、2艇はパラオのフィニッシュラインを切るかもしれません。ぜひ、「ichidake」のトラッキングシステムで、皆さんも2艇の攻防を応援してください。

(文・写真=実行委員会広報)