やっぱりプラスチックが好き

[plastics-04]

前回、ヨットはプラスチックの固まりである……と書いたけど、

プラスチックにもいろいろありまして。というのが今回のテーマ。

まずは、今のプラごみ問題の主役ともいえるレジ袋。
ヨットの上でもデイセーリングなんかだとそのままゴミ袋になることは多いし、部品入れなんかにも使ってませんか? いくつかまとめて箱にしまったりと、分別に使っているかも。

まずはそこらから、、、。

・ポリエチレン
略称:PE
エチレンが重合したもので、最も単純な高分子化合物。
レジ袋やビニール袋に使われるポリエチレンにもいろいろあって、低密度ポリエチレン(LDPE:Low Density Polyethylene)は柔らかく表面がツルツルしている。袋物業界ではローデンポリと呼ばれるもよう。
より透明度が高く強度がある直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)も普及しているんだそうな。何が直鎖状なのかはよくわかりませんが。

対して、
高密度ポリエチレン(HDPE:High Density Polyethylene)ハイデンポリの方はシャカシャカして不透明のあれ。伸びが少なく丈夫。

ポリバケツや、軽油を入れておくポリタンといったヨットの上で良く見る面々もこちらポリエチレン製。
LDPEで比重は0.91-0.92。HDPEでも0.94-.095と、水に浮く。

さらに、
分子量を高めた超高分子量ポリエチレン(UHPE:Ultra High Molecular Weight Polyethylene)がヨットで使うロープではお馴染みのダイニーマ®
ダイニーマ®は東洋紡の商品名で、米国Honeywell社ではスペクトラ®と呼ぶ。
かつて三井石油化学工業からテクミロン®が出ていたが、ダイニーマ®を開発したオランダDSM社から特許権侵害の訴訟となり、今は国内ではダイニーマ®が独占している。

どのくらい高分子量なのかで、SK60、SK70、SK75、等のグレードがあるが、普通のポリエチレンと比べると、とんでもなく高強度で高弾性率だ。

と、ここで、まずは材質の性能について、ロープとして使われることを念頭に、、、

〈弾性率〉
伸びにくさ。力を加えるとひずみが生じ、力を除くと元に戻る。これが弾性。
弾性率が高い=伸びにくいということ。伸度と書いてあるものもあるけど。

力を抜くと元に戻るのが弾性率だが、力を除いても変形したままなのが、塑性変形。
さらに時間が経つほど変形が進むものを”クリープ”として呼び分けているもよう。
塑性変形が大きいものは、伸張弾性率(どれだけ元の長さに復原するか)なんて数字が用いられるもよう。

〈破断強度〉
強度とは、変形や破壊に対する抵抗力のことで、繊維の場合は破断強度になる。
弾性率は低いけど破断強度が高い──つまり伸びるけど切れにくい材質もあるわけで、この2つは分けて考えたい。
強度の単位は「N/m㎡」とのことなので、ロープなら太さあたりの強さということになる。重さはまた別。
比重が小さい=軽い、ということ。真水の比重が1.0。海水は、1.025くらい。

と、ダイニーマ®、スペクトラ®などのUHPEは、同じポリエチレンの仲間といっても、弾性率、破断強度ともきわめて高く、ハイテク繊維と呼ばれている。まあ、ポリエチレンも生まれた当初はハイテク素材だったんだろうけど、今では旧来の化学繊維とハイテク繊維は分けて見ている。

ヨットの上では、セールをコントロールするラインには弾性率の高いものが求められる。ぐっと力が加わった時にわずかでも伸びてしまっては困るので。
また破断強度が高いものほど細いロープで良いことになり、軽量化や空気抵抗の軽減に繋がる。
かつては金属のワイヤーを使っていたような場所でもハイテクロープにとって代わられ、レースヨットのみならず、クルージング艇でも使われはじめている。

そんなハイテクロープの主役が、こちらダイニーマ®(UHPE)だ。
ダイニーマ®は後述する他のハイテク繊維に比べ軽く、比重が0.97。水に浮く。
つまり、重さに対する破断強度は大きく、紫外線にも強いので外皮無しでハリヤードや金属シャックルの代わりにも用いられる。
ただし、ハイテク繊維の中では初期伸び(クリープ)があるので、セールの素材には向かなかった。
今では工場でテンションをかけて初期伸びをさせるプレストレッチ処理がなされ、クリープの弱点もかなりこなれているようで、セールの素材にもなっている。

・ポリエステル

略称:PEs
ペットボトルのPETはポリエチレンテレフタラートの略で名前に「ポリエチレン」がつくもののポリエチレンではなくポリエステルの一種。ポリエチレンとは性質が異なる。

ダクロン®(米、デュポン社)とかテトロン®(帝人、東レ)とかは商品名で、旧来型の化学繊維に分類されるが、今でもロープやセールクロスの基本素材といえる。あるいはガラス繊維をポリエステル樹脂で固めたのがFRP。と、船体をはじめヨットの上では広く使われている。

フリースもポリエステル繊維からできている。
となると、フリースのあのモフモフの毛並みも、ちぎれ落ちればマイクロプラスチックで、海に落ちればもう海洋汚染だ。
家庭の洗濯排水から流れ出ている化学繊維のくずも問題であると言っている人がいるくらいで、このあたりはワタシらにどうにかしろと言われても、困る。
ワタシらフリースが無いと生きていけません。

同じポリエステル繊維からできている衣類でも、ウインドブレーカーなんかはツルツルしていて素肌に直接着ると着心地ははなはだ悪く、しかしアウトドア用のアンダーウエアは肌触りが良い。ポリエステル繊維自体は水を含まないが、編み方しだいでは汗を吸い上げる機能をもたせることができ、おまけに乾きが早い、と良いことずくめなのだ。
対して木綿のTシャツやジーンズは、普段着には良いけれど、ヨットの上で着るとへたすると死ぬ。

と、海の上の主役はポリエステル、と言っても良いかと

比重は1.34-1.39で、海水でも沈む。そう、ペットボトルは沈むのです。
海のゴミとしてあまり見かけないなぁと思うけど、海底に沈んでいたのだ。


・ポリプロピレン

略称:PP
比重は0.85-0.92とポリ仲間の中でももっとも軽く、当然水に浮く。

ポリエチレンと比べ融点が高い。つまり、高温でも溶けにくい。
ということで、電子レンジ対応の密閉容器はだいたいポリプロピレン。
その他、家電製品や自動車などの成形品でも広く使われる。ということはヨットの部品にも多く使われている、はず。

ビニール袋でも、透明度にすぐれ、光沢があってパリパリとしているのはポリプロピレン製。中でも、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)というらしい。
透明度は落ちるが、無延伸ポリプロピレン(CPP)というのもあるもよう。
難しいですなぁ。

紫外線に弱いが軽く強度があるので、ロープの芯材をポリプロピレンにしてポリエステルの外皮で覆う、なんてのも結構「ダクロン・ロープ」として売られているようだ。

・ポリスチレン
略称:PS
成形性が良い。
安いが、弾性に乏しく曲げや衝撃に弱く、傷もつきやすい。また経年とともに黄変や曇りを生じ、実用品としてはやや耐久性が劣る。そこで、使い捨てのものに多い。
発泡スチロール、プラモデルなど。
熱に弱いので、お総菜のパックでも刺身用みたいな電子レンジを使わないようなものには使われているもよう。ペットボトルのラベルはポリスチレンが多い。

と、ペットボトルは、本体がPET。キャップはポリプロピレン。ラベルがポリスチレン。と、3種類のプラスチックからなっている。

その他「容器包装プラスチック」として分別回収されるゴミも、上記のように様々なプラスチックからなっていて、これを元の素材にリサイクルする「マテリアルリサイクル」はかなり難しいのだ。


・ABS樹脂

アクリロニトリル (Acrylonitrile)、ブタジエン (Butadiene)、スチレン (Styrene)共重合合成樹脂の総称。
堅牢で、引っ張り、曲げ、衝撃などに強く、耐熱性、耐寒性、耐薬品性も優れている。着色しやすく、光沢のある成形品を造ることができるため、密閉容器や家電製品の筐体にも多く使われており、レゴブロックもこれ。
ということから、ヨットの部品にも多く見られるはず。

・ポリ塩化ビニル

略称:PVC
ビニール袋、ビニール傘、ビニールハウスの語源になったと思われる。
“塩化”というくらいだから塩素(Cl)が含まれており、これがダイオキシンの発生源と言われ、今は上記「ビニール○○」ではほとんど使われていない。

対して、その他のプラスチックは構造式をみても解るように、炭素(C)と水素(H)からできており、完全燃焼させれば理論上は水(H2O)と二酸化炭素(CO2)と熱になる。
まあ、ポリ塩化ビニル製のビニールハウスを野焼きしたりなんかしたら、ほんとにダイオキシンが出そうだけど。今のゴミ焼却炉なら高温で完全燃焼させるので大丈夫。そもそも、食料品の食べかすなどに塩分(NaCl)はあるわけで。

安価で、水道管はだいたいこれ。塩ビパイプってやつ。ヨットの上でもかなり使っている。
電気絶縁性が高く、今でもビニールテープはだいたいポリ塩化ビニルのもよう。PVCテープともいう。


・ポリビニルアルコール

略称:PVA
ビニロン繊維(PVA繊維:ポリビニルアルコール繊維)は、1950年、クラレが世界で初めて工業化に成功した国産第一号の合成繊維です。」とクラレのホームページにあるけれど、実験室での合成は1939年で、後述のナイロンに遅れること僅かに2年。世界で2番目に作られた合成繊維だ。

水を含み吸湿性があり、綿に似た風合い。
この頃は、麻、綿、絹といった天然繊維に代わるものとして開発していたようだけど、今の化学繊維には圧倒的な高性能が求められている。
ロープの他、ネットにして農業に、あるいは土木建築などでも広く使われているもよう。
ビニロン自体は乾くと硬くなるそうで、ポリエステルを混紡したクレモナなんかもアリ。トラックの荷縛りの他、海でも係留索などに使われる。


・ポリアミド

アミド結合によって多数のモノマーが結合してできたポリマー……っていわれても良く分からないが、1935年、米、デュポン社が合成したのがナイロン。人類が最初に工業生産した合成繊維とも。
当初「ナイロン」は商品名だったが、今は広くポリアミド繊維のことをナイロンとよんでいる。
東レのナイロン樹脂(ポリアミド樹脂)にアミラン®なんてのもあるもよう。

ポリエステルに比べると弾性率が低い。つまり伸びやすいということ。しかし破断強度は大きい。
そこで、ヨットではスピネーカーのクロスによく使われる。
レース用にはポリエステル製のスピネーカーもあるが、風の強弱で変形しにくいかわりに破れるときは一気に破れる。その点、ナイロンのスピネーカーは衝撃を吸収して破れにくい、ということ。
係船索なんかも、その伸びが衝撃を吸収してくれて強い、ということでナイロン製がよく使われる。。
ポリエステルと異なり、繊維自体に水を含む。

ナイロンを改良して耐久性を増したのがコーデュラ(Codura®

またハーケンブロックの滑車部はトーロン®製。これは、ポリアミドイミド(PAI)といって、ポリアミドとポリイミドの両方の特性を併せ持つスーパーエンジニアリング・プラスチック……なんだそうな。


と、同じポリアミドでも、ナイロン66をはじめととしていろいろあるみたいだけど、いずれも脂肪族のポリアミドで、芳香族のポリアミドがアラミド。Kevlar®はデュポン社の商標。帝人だとテクノーラ®、オランダの子会社テイジンアラミドではトワロン®という商品名で生産している。

同じポリアミドの仲間でも、こちらはナイロンとは桁違いの高弾性率、高破断強度を誇るハイテク繊維だ。

芳香族ってナンデスカ? と問われましても良く分かりません。英語だとaromatic compounds。当初はシンナーみたいな匂いからきているらしい。

Studyplus
 
芳香族について1から解説!ベンゼン環の性質がわかります【有機化学】
https://www.studyplus.jp/518
有機化学の問題を解いていると必ず出てくる「ベンゼン環」。二重結合と単結合が混ざった複雑な形をしている上に、何やらたくさんの有機物に変化するので覚えることが沢山です。しかしこのベンゼン環を含む芳香族化合物、大学入試の有機化学においては脂肪族化合物と...

構造式にある六角型の部分がベンゼン環で……。
うーん、高校の化学で習ったのか? 化学の先生がツルッパゲだったことしか覚えていません。

同じアラミドでも、レギュラー、ハイモジュラスなどあり。
他のハイテク繊維と比べると硬く水を含むので、ロープのコアに使うには、バックステイなど直線上に用いられる場所で使われる程度だが、耐摩耗性、耐熱性が高いので、ロープの外皮にポリエステルやコーデュラ等と混ぜて使われる。
耐切創性が高く、防弾チョッキもだいたいアラミド製。ヨットでも船体外面をアラミドにして、衝突時に船体が割れにくくしたものもあり。
また、アラミドの中にはパラ系とメタ系があり、メタ系アラミドのNomex®(デュポン社)はハニカム状の板にして、船体コア材として用いられる。

・ポリアリレート

ダイニーマと共にヨットのロープで良く使われているのがベクトラン®(クラレ)。高強力ポリアリレート繊維で、分子と分子の結びつきが非常に強い液晶ポリマー(LCP:Liquid Crystal Polymer)を原料としているため弾性率も破断強度も高い。
UHPE(ダイニーマ®、スペクトラ®)に比べ初期伸びが無いので、ジブハリヤードなどはこちらか。
ポリエステル系の液晶繊維で芳香族ポリエステルだ……といっても、液晶繊維というのが何なのか、さっぱりわかりません。もうちょっと勉強します。

シベラス™(東レ)、ゼクシオン®(KBセーレン)なんていうのもLCPらしい。

・ポリフェニレン・ベンゾビスオキサゾール(PBO)

商品名はザイロン (Zylon®) (東洋紡)。強度、弾性率共に他のハイテク繊維と比べても断トツ。
しかし、価格が高く、なにより光に弱いので、ヨット用のロープとしてはほとんど使われていない。
難燃性が高いので、非常用の縄ばしごや消防士の服なんかに使われているもよう。


と、ヨットの上でも様々な種類のプラスチックが適材適所で使われている。もうプラスチック無しではやっていけないくらい。

ターンバックルに親の敵ほどぐるぐる巻かれたビニールテープ。あれはポリ塩化ビニル製が多いもよう。古くなってピラピラしてませんか? 劣化してピラピラしてるようなのは短くカット。あるいは新しくまき直す。なにより、必要以上に巻かないように。

わざと海にゴミを捨てるようなセーラーはいないだろうけど、不注意で海に流してしまうことはどうしても避けられず、
くれぐれも注意して遊ばないと。

まあ、ヨット遊びよりも、海水浴場の海の家の方がリスクは高いと思うけど。

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