セミナー、トレーニング、ドリル

[race-12]

7/17に行われた、日本-パラオ 親善ヨットレース実行委員会と〈みらいへ〉との、合同トレーニングというか研究、試行錯誤……と、前回の記事で書きました。

このとき撮影した動画をまとめてみました。


編集しながら考えたのですが、これは「演習」だな、と。
講習とか訓練とはちと違う、ヨットと帆船で試行錯誤する「合同演習」。

できたこの動画も、遭難時のマニュアルではありません。演習の記録。
ここから、意見を出し合い、研究し、備える、と。

動画に出てくる、ライフラフトの展開とそれに乗り込むの図。各地で行われている安全講習会でも披露されることがありますが、多くは講習会への参加者の前で実演してみせるというもの。モデルが海に入り、講習会参加者は見るだけ、というケースがほとんどだと思います。
これが講習会(セミナー)です。
火工品を点火してみる……くらいは各自でやりますが、後は講師のお話を聞くという感じ。

対して、ワールドセーリングの外洋特別規定(OSR)にある、第6章 トレーニング(TRAINING)は、講習会(セミナー)というより訓練。トレーニング。
受講者自ら海に飛び込んで、漂流する際の体勢やライフラフトへの乗り込みなどを実習します。

その名も「Offshore Personal Survival Training course」。

カテゴリー0、1、2では、【OSR:6.01.2】で、

艇の責任者を含み30%以上で少なくとも2名の乗員は、レーススタート前5年以内に、OSR 6.02トレーニング項目の訓練を行わなければならない

とあり、その、6.02には、

6.02.1 他艇救助
6.02.2 個人装備の理論と実践
6.02.3 安全備品のケアと整備
6.02.4 防火と処すかの理論と実践
6.02.5 落水、認識と救助
6.02.6 低体温症、コールドショックと溺死
6.02.7 乗員の健康
6.02.8 海洋気象
6.02.9 悪天候
6.02.10 ストームセール
6.02.11 ダメージコントロール
6.02.12 捜索救助機関
6.02.13 信号焔と信号道具の理論と実践
6.02.14 緊急通信の理論と実践
6.02.15 ライフラフトと船体放棄の理論と実践

と各トピックが具体的に列挙されております。

そしてこちら、

上記、9月に横浜で開催される「安全講習会」は、これらのトピックスが含まれるもので、Yachting Australia認定の「Safety and Sea Survival Course」。つまり、【OSR:6.01.2】を満たすトレーニングです。
記事のタイトル「安全講習会を実施」という表現は相応しくなかったですね。講習じゃなくて「訓練」だから、これ。実際に、ヨットに乗っている装備で海に入り、ライフラフトに乗り込みます。
座学でも、参加者同士実際に役割を決めてシミュレーションしたり議論したり、と、実践的なものです。まさに訓練(Training)

9月22日-23日の第2回開催はすでに募集定員に達しましたが、
9月20日-21日の第1回開催分はまだ空きがあるようです。

受講料8万円と、けして安くはないですが、第1級海上特殊無線技士の免許講習でも10万円くらいしますから。それに比べれば、ずっと実用的でタメになるトレーニングかと。

こちら、正しい消火器の使い方。
陸上でのお話ですが、これを見る限り、ヨットのキャビンの中で「加圧式粉末消火器」を使うとヤバイということがわかります。
と、このあたりも、「Safety and Sea Survival Course」ではどのように説明されるかな。

詳しくは、こちら、『2018-2019 Offshore Special Regulations』
39ページから、
APPENDIX G TRAINING
Model Training Course Offshore Personal Safety
でモデルコースが記されています。


加えて、
【OSR:6.04】では、「艇上での定期訓練」(Routine Training On-Board)とあり、落水救助(MOB)のドリル(drill)。あるいは、船体放棄(Abandonment of vessel)。
ドリルは自分達で行う反復練習です。
これはすべてのカテゴリーで、少なくとも年に1回行うこと。
パールレースなどでは、このドリルを行ったさいに写真を撮るなりして提出することになってますね。

【OSR:6.05】は医療トレーニング。
カテゴリー1では2名以上の乗員が受けること、となっており。「日本-パラオ レース」では、別紙1 6. 5)で、日本赤十字主催「救急法基礎講習受講証)でも良し、とされています。

これも、「講習」という表現になっていますが、実際は実践的な”トレーニング”です。
近くにAEDがあって、救急車が来てくれるような陸上で役にたつ内容ですが……。

合同演習の参加者

ということで、
講習(セミナー)、訓練(トレーニング)、反復練習(ドリル)、と、それぞれなんとなく意味が違っています。
となると、7月17日に行ったのはそのどれでもなくて、演習かな、と、思ったわけ。
じゃあ英語だと、なんだろう。
合同演習=joint maneuversか。
maneuver はヨットでは良く出てくるけど、日本語にできなくてそのままカタカナ語にして「スターティング・マヌーバは……」なんて使うことも多いですが。この場合は操船、それも、戦術、戦略的なフネの動き、という意味になるか。
となると、今回の合同演習とはちと違うかなぁ。
practiceとかExerciseだと、なんか軽いしなぁ。
……と、悩む日々です。

[race-12]