未来へ向けて、救助してみる
今年、12月29日に横浜をスタートする「日本-パラオ親善ヨットレース」に、医師を乗せた〈みらいへ:MIRAIE〉が伴走することになっています。
〈みらいへ〉はグローバル人材育成推進機構が運航する練習帆船です。»Click
伴走するにあたり、レース参加艇にどのような支援ができるのか。
いざ遭難となった場合、救助のためにどのような装備や技術、知識が必要なのか。
〈みらいへ〉の増島宏明船長は、
「SOLASでも、自船が助けられる側としてのトレーニングはあっても、助ける側に回る規定はほとんど出てこない」と言います。
また、同じ船乗りとはいえ、外洋ヨットはまた特殊な乗り物で、その特性も解っていていただかねば。
いやいや、ヨット側からしても、〈みらいへ〉がどんな船なのか、知っておかねば。
ということで、レース中のヨットが遭難したことを想定して、両者合同で、トレーニングというか研究、試行錯誤してみようということになりました。
7月17日。相模湾、三浦半島の沖合で、〈みらいへ〉と「日パラレース」にエントリーしているヨット〈トレッキー〉が合流。
正直言って、このての帆船。マストとセールはお飾りなのかと思ってました。
……って話は、初代〈日本丸〉のところで書きましたけど。
これおそらく、下田の観光船、黒船「サスケハナ」を何度か見てたからだと思うんだけど。
あれはホントにお飾りのマストで、単なる観光船ですから。
対してこちら〈みらいへ〉は、〈日本丸〉同様まさに帆船です。観光船と同じに見ていて、すいませんでした。
機走で最大7.5ノット、巡航6ノットとありますから、この非力さからして(良い意味で)、ほんとに帆船。175ftの大型外洋ヨットという感じですね。
舷側にヨットを抱かせるとこんな感じ。
思っていたより乾舷は低く、穏やかな海面なら乗り移りはなんら問題ありません。
が、波や風があればこうはいかず。じゃあ、どうやって〈みらいへ〉側に乗員を引き上げるか。
そこで、まずは〈トレッキー〉からライフラフトを膨脹・展張。そこへ、乗員2名が乗り移り漂流する。
〈みらいへ〉側でライフラフトに接近して、回収救助する……という設定で。
ヒービングラインがうまく届かない、あるいはラフト内の乗員に意識がないなんて場合は、〈みらいへ〉側からダイバーが入水。ライフラフトに泳ぎ寄って乗り移り、再び〈みらいへ〉への接舷を試みる。
あるいは、落水者をそのまま〈みらいへ〉へ引き上げる。これはライフラフト無し。
この場合も、落水者に意識がなければ、〈みらいへ〉からダイバーが入水。
と、様々なパターンが考えられます。
それらを一つ一つ、実際にやってみて、検証し、考察し、と作業は進みます。
写真は、膨張式のライフジャケットの上からヨット用の救助用具ライフスリングをかけて、〈みらいへ〉の手動ウインチで吊り上げるところ。
ウインチは見た目以上に強力でしたが、落水者側はライフスリングで締め付けられて結構窮屈。
じゃあどうするか、といっても、そもそも、一般商船は落水事故を想定していないようで、落水者の釣り上げに適した器具が無いそうな。
「ここは、モッコを使った方が良いんじゃない?」
「モッコって、荷物を吊り上げるときに使う網の袋みたいなやつ?」
「そうそう。」
「よし、次回はモッコを用意してやってみよう。」
なんて、様々な反省点、アイデアが出ます。こうした検証を重ねることで、いざというときの備えになるはず。
もちろん、事故を起こさず走りきることが第一ではありますが。
横浜からパラオまで、1700マイル。
途中、海上保安庁、自衛隊、米軍と、担当範囲を変えつつ救難体制はかなり整っている海域といえますが、やっぱり基本は自助努力。その一つが、自前の救難体制なのです。
[Race-11]