火工品について補足

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6月に公示した、安全講習会、

が開催されました。

こちら、7月の記事、

で書いたように、講習会というより、訓練、トレーニングですね。
正式には、
「World Sailing Safty and Sea Survival Corse」
となっています。

講師は、オーストラリアのGenevieve White先生。ニックネームはジェン。
「ボルボオーシャンレース 2001-2002」で女性だけのチーム〈Amer Sports too〉のナビゲーターを務めた大物セーラーでもあります。

外洋ヨットレースでの安全に関わるルールには、

SOLAS( International Convention for the Safety of Life at Sea:海上における人命のための国際条約)
ISO(International Organization for Standardization:国際標準化機構)
WS-OSR(World Sailing Offshore Special Regurations:WS外洋特別規定)

があり、今回のトレーニングはWS-OSRに基づくものなので、規格──特にライフジャケットや火工品、ライフラフト等はISOとSOLAS基準での説明となっていました。

しかし国内では、日本の船舶安全法に基づく技術基準や安全備品が定められており、総トン数20トン未満の船舶は小型船舶検査機構による船検があります。

つまり日本艇は、まずは日本の船検基準を満たさなければ、走れません。
そのあたりに違いについて、ここで解説しておきます。

まずは火工品について。

『Kazi』誌2018年2月号に詳しく書きましたが、近海以上では、

信号紅炎 x 2
小型船舶用自己発煙信号 x 1
小型船舶用火せん x 4
発煙浮信号 x 2

が必要です。搭載されていなければ船検が通らないので、必ずあるはず。

一方、
WS-OSRでは、カテゴリー3以上で、

Red Hand Flares(LSA Ⅲ 3.2) x 4
Orange Smoke Flares(LSA Ⅲ 3.3) x 2

とあるだけ。わりとシンプル。

そして、日本の「信号紅炎」と「発煙浮信号」はSOLAS規格品なので、

信号紅炎 = Red Hand Flare(LSA Ⅲ 3.2)
発煙浮信号 = Orange Smoke Flare(LSA Ⅲ 3.3)

のことです。
船検の、沿岸や限定沿海で搭載する「小型船舶用信号紅炎」と、この「信号紅炎」は同じ赤い炎が出るとはいえ、自転車とナナハンバイクくらい違うものと思ってください。

こちら、小型船舶用信号紅炎。自転車レベルの炎

また、同じFlareでも、Red Hand Flareは炎が出ますが、Smoke Flareは煙だけ。
トレーニング会場で話題になったのですが、「Flare」には、炎が燃える、燃え上がる、といった意味以外に、広がる、大きく開く、という意味もあり。フレアスカートのあのフレアですね。あるいは、「(信号灯で人に)救助を求める」なんて意味もあるもよう。

ということで、
Orange Smoke Flare = 発煙浮信号で、炎は無しの煙だけなので御注意を。

で、話は戻って、
近海で船検をとっているヨットは、OSRカテゴリー3以上に合わせるためには、信号紅炎を2本買い足さなければなりません。


また、OSRで必要なSOLAS仕様のライフラフトにはハンドフレアに加えてパラシュートフレアも搭載されており、トレーニングではパラシュートフレアの説明もありました。

しかし、船検用のライフラフト(近海用)備品の中には、

小型船舶用火せん x 2
小型船舶用信号紅炎 x 2
発煙浮信号 x 1

と、パラシュートフレアは入っていないようです。

火せんとは、打ち上げ花火のように空高くで発光するもので、小型船舶用火せんで上昇高度100m以上。燃焼時間5秒以上。光度8,000カンデラ以上。

対して、
パラシュートフレアは、上昇高度300m以上、燃焼時間40秒以上、光度30,000カンデラ、と、平幕と横綱くらいの違いがあります。
日本でも落下傘付信号として販売されていて、搭載は自由(搭載しても違法ではない)です。

なぜ船検備品にパラシュートフレアが無いのか。
間違って、あるいはギャング団が故意に、陸上で発射すると危険なのでプレジャーボートにはなるべく搭載しないように取り決めているのかもしれません。

(以下、続く)

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