レース観戦ガイド(ハンディキャップ編)

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一言で “ヨットレース” といっても様々あり、「日本-パラオ親善ヨットレース」は、

長距離ノンストップフルクルーハンディキャップ・レース

というジャンルになります。

この中の、ハンディキャップレースとは?
艇の性能毎にハンディキャップを決め、修正したタイムで順位を競うものです。

対して、
まったく同じ形のヨットで競うのがワンデザインレース
着順勝負なので、見ていてもわかりやすいです。

一方、
同じ着順勝負でも、ヨットの主要目に枠を設けたクラスを造るのがボックスルール
枠内で自由に設計建造するわけで、艇の性能差も勝負の要素となります。乗員の腕前に加えて、ヨットのデザインをも競う、ということです。

両者とも着順勝負で分かりやすいのですが、高価な外洋ヨットをワンデザインやボックスルールで縛ると、なかなか艇数が揃わずクラスが成立しません。
大小、重軽、様々な艇種を集めてレースを行うためには、ハンディキャップ制度が必要になります。

とはいえ、ヨットの性能というのは極めて複雑なもので、セールの面積が大きいと……たしかに速いのですが、風が強くなったらセールを小さくしなければ吹き倒されてしまうわけで。強風下でも大きなセールを展開できるだけの復原力の大小もスピードの要素になります。

もちろん、軽いフネほど速いのですが、基本的に水を押しのけて走るフネの限界速度は水線長で決まってきます。
水線長が長いほど速いフネといえますが、水線長はヨットが静止した状態で計測します。これが、走り始めるとまた変わってしまい……。

□ PHRFとは

……と、複雑怪奇なヨットの性能を数値で表すのはたいそう難しいことで、これまで様々なシステムが考えられ改良されまた新設されと、工夫されてきました。

「日本-パラオ親善ヨットレース」では、レース公示「5.ディビジョン分け」で、
5-1 PHRF ディビジョン
5-2 IRC ディビジョン
5-3 ORC ディビジョン
と3つありますが、PHRF、IRC、ORC、はそれぞれハンディキャップ・システムのことです。

今回メインとなるのがPHRF(Performance Handicap Racing Fleet)。個々の艇のポテンシャルを推測し経験則も加味して “良い加減” にハンデ値(TCF:Time Correction Factor)をつけるものです。
科学では割り切れない複雑な要素を、経験則でまるめ “エイヤ” と数字を出します。
植木等的な “いいかげん” ではなく、 “良い” 加減ということ。

となると、 “誰が” 加減を判断するのかが重要で、今回のレースでは日本セーリング連盟(JSAF)の外洋計測委員会 PHRF小委員会の八木達郎委員長によるTCF値が使われます。

八木委員長は、

でご紹介した「グアムレース」でも優勝しているベテランレーサーでもあります。


まだ正式なTCF値が発表されていないのですが、

所要時間ET:Elapsed Time)にこのTCFを乗じたものが修正時間CT:Corrected Time)となり、
修正時間の短い方が勝ちになります。

TCF:0.898 のA艇が1時間ちょうどでフィニッシュしたら、、
3600秒 × 0.898 = 3233秒

TCF:0.798 の B艇だと、
4051秒 × 0.798 = 3233秒

つまり、B艇は451秒遅れてフィニッシュしても修正時間で並ぶ。
それより早ければ修正で勝つ、ということです。

「日本-パラオ親善ヨットレース」は10日近く走り続ける長距離レースなので、所要時間をこのように “秒” で表すと何十万秒とかの大きな数字になってしまい分かりにくく。また、2019年12月から2020年1月と月や年をまたぐことにもなり、所要時間の計算が結構ややこしいのですが、そこは表計算ソフトを使うとして……。
これがまた表計算ソフト上で時間の表示に代えるにはなかなか……なんですけど、そういうのはこっちでやります。ご心配なく。

(続く)

—(12/13) 後段、なんだか分かりにくかったので、シンプルに書き直しました。ハンディキャップ表も正式発表までお待ちください–

—(12/23) 正式なPHRFのTCFが出ました。»Click

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