海洋マイクロプラスチック調査結果報告書
2021年7月15日。
国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)から、「2019-2020 日本-パラオ 親善ヨットレース」時に行われた海洋マイクロプラスチック調査の報告書が提出されました。
こちら↓
Japan-Palau Yacht Race Science Report 20210712
専門的な報告書なので、こちらから一部用語の補足を、
■ キーポイント–P.2-
ジャイア:
環流(gyre)のこと。
ここでは、海流の循環渦のことだと思われます。
西部北太平洋亜熱帯ジャイアは↓こちらに詳しいです。
■ 1. はじめに–P.3-
(International Monohull Open Class Association: IMOCA):
ヨットのみなさんならお馴染み、単独無寄港世界一周ヨットレース「ヴァンデグローブ」で使われるヨットのクラス協会のこと。そういえば、「ヴァンデグローブ」でもレース中に海水採集してましたね。
海洋プラスチック問題を突き詰めると、不用意に海や海岸で遊ばないこと……となってしまうので、セーラーサイドからするとここは重要。
海洋リテラシー:
すいません。かなり広い意味での言葉のようで、よくわかりません。
こちらを参照とのこと。
■ 2. 手法–P.4-
① ニューストンネット
② 半自動マイクロプラスチックサンプラー
の2つの方法で、海洋表面に浮かぶマイクロプラスチックを採取して、数と大きさを調査したということ。
1μm(マイクロメートル)は、1mm(ミリメートル)の1000分の1。
つまり1000μmは1mmです。
採取の方法などは、5ページあたりに詳しく解説されています。
■ 2.2 サンプル分析–P.6-
船上でのコンタミ:
contamination(汚染)の略。ここでは、異物混入のことと思われます。観測者の衣類から出る繊維とか。
誤差を排除して結論を導き出すのが難しいんでしょうね。
■ 3. 結果と考察–P.6-
プラスチックといってもいろいろあり。PE: ポリエチレン, PP: ポリプロピレン, PS: ポリスチレン, PVC: ポリ塩化ビニル, PET: ポリエチレンテレフタレート, PUR: ポリウレタン, PMMA: アクリル樹脂
それぞれの違いについては、以前筆者が書いた記事を参照してください。
北太平洋におけるゴミの流れは、かなり解明されているようで、こちら、
Western (North Pacific) Garbage Patch:
漂流ごみが溜まる海域は、この報告書では “存在が予想されていた” という記述になっており、今回の観測結果でさらに裏付けられたと言えるのか?
浮遊物が集積しやすいメカニズムがあるのなら、そこで一網打尽にすくい上げるなんてことはできないものか? なんて考えちゃいますね。
メソスケール:
ここでは海洋現象におけるmeso(中間)規模の面積での現象のこと。具体的には、2km から2,000km の範囲のことらしい。
うーむ、ここまで読むと、
海洋プラスチックゴミの調査研究は、海流の調査研究に繋がりそう。
■4.今後の課題と展開–P.10-
海洋観測データの時空間ギャップ:
観測地点/観測日時の隙間、ということですかね。
それを埋めるには、一般の船が通らない場所を走るヨットレース中の採取は適している、と。
我々セーラーサイドへは、
サンプルの収集から分析データが得られるまで時間がかかることについて、こちらの長いプロセスについても(セーラー側の)理解を得ることが必要だ。
とあります。すぐに結果を求めるな、ということ。すいません。ついつい気がせいちゃって。
問題は、これらのプラごみがどこから来たかってことだと思うのですが、それはまだまだ先のお話のようで。
今の時点で我々海で遊ぶ側としては、プラスチックを海に流してしまうリスクについて考える必要がありそうです。
わざと海にゴミを捨てるようなセーラーは一人もいないと思いますが、不用意に風で飛ばされたり、トンビに袋ごと持っていかれたりと、海の上や海岸で活動しているとリスクは大きいですから。
そういえば、日本セーリング連盟(JSAF)の環境委員会からも、
(前略)環境保全、ゴミ削減の意識向上のためにレジ袋ゼロ、シングルユースプラスチックの削減、ビーチクリーンなど少なくとも何か1つは独自の環境保全の活動を組み入れて下さい。
なんて記事がありました