免許や証書のヤヤコシイ話

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「日本-パラオ親善ヨットレース」スタートの12/29(日)まで、あと1ヶ月を切りました。

安全備品だけでも、こんなにたくさん

参加艇側も主催者側も、レース準備は佳境を迎えています。


『レース公示』には、「3.参加資格」として、
前回書いた、
【3-1- 1)】外洋特別規定(OSR)に加えて、

【3-1 3)】 ……有効な船舶検査証を有する艇……
とあります。

総トン数20トン未満の船舶を「小型船舶」といい、日本小型船舶検査機構(JCI)が検査し、合格した小型船舶に関して交付されるのが「船舶検査証」です。通称、船検。

最大搭載人員や航行区域などはこの「船舶検査証」に記されています。

航行区域は、平水沿岸限定沿海沿海近海遠洋と分かれており、「日本-パラオ親善ヨットレース」では近海区域以遠で船検証をとる必要があります。

『レース公示』には「近海の……」とは明記されていませんが、「有効な船舶検査証」というのは横浜からパラオまで行くのに「有効な」という意味にもなりますね。

国内のほとんどのヨットレースは、沿海(原則として本邦海岸から20マイル)以内の海域で行われるため、多くの外洋ヨットは沿海限定沿海で船検をとっています。
そこで、今回のレースのために近海区域で船検をとりなおしている艇もあります。
となると、新たに必要となる設備もあり、結構たいへんだそうな。

ちなみに、海では緯度の1分が1マイル(海里、International nautical mile)です。表記はM、NM。
海図で見るときは緯度の目盛りを使うから良いのですが、地球は完全な球体ではないので実際の距離は場所によって微妙に異なります。そこで、国際的には、1NM=1852メートルと定められています。
陸上の1マイル(mile)は、1760ヤード=1609.344メートルと、海の1マイルとは異なる単位です。googleマップで距離を測ると、海上でも陸上マイルで表示されるので御注意を。

このwebサイト上では、マイルといえば海里のことです。

また、船速は、1時間に1海里進む速度が1ノット(kt、kn)。時速1.852km

外洋ヨットの上では、風速もノットで表示することがほとんどです。
ところが、日本の天気予報では風速はメートル毎秒で表すことがほとんどでしょう。

この場合は、秒速1メートルは、1時間(3600秒)だと3600m進むので、時速3.6km。
1ノットは時速1.852kmですから、だいたい倍。秒速1メートルは約2ノットと簡単に計算できます。

とこのあたり、ヨットレースを初めて観戦する方は頭に入れておいて頂けると、スタート後のデイリーレポートなどを読む際に役に立つかと思いまして。

ということで、本邦海岸から20マイルというと、5ノット(9km/h)というゆっくりした船速で走っても4時間で出てしまう計算です。かなり狭い。
また、領海とは基線(おおざっぱに言うと海岸線)から12マイルと、想像しているよりずっと狭いです。
そこから12マイルが接続水域。基線から200マイルが排他的経済水域(EEZ)となっています。


エンジン付きの小型船舶に乗る場合は、小型船舶操縦士免許が必要になります。
「船舶職員及び小型船舶操縦者法」に定める海技従事者の一つで、平水区域および、海岸から5海里を超える場合は、一級小型船舶操縦士免許が必要になります。

乗り組む乗員のうち誰か1人がこの一級小型船舶操縦士免許をもっていればオッケーで、通常は免許を持っている人が船長になります。というか、船長は免許をもっていなけらばならない、と言った方がいいか。

参加艇〈テティス4〉の児玉萬平オーナー/スキッパーと証書の数々

一方、
レース公示の「3.参加資格」には、
【3-2】 艇のオーナー
【3-3】 艇長(スキッパー)
【3-4】 乗員(クルー)

と3つに分けて記載があります。

艇長(スキッパー)とは船長のこと。
外洋特別規定(OSR)では、「person in charge(艇の責任者)」という表現も出てきますが。これもスキッパー=船長のことなのでしょう。たぶん。

で、
オーナーがスキッパーを兼ねることもあり。この場合はオーナー/スキッパーと呼ばれます。

逆に、操縦士免許は別の人が持っているケースも考えられます。
その場合、ヨットレースのルール的なスキッパーとは別に、法的には免許を持っている人が船長というケースもあろうかと。

このあたり、日本の法的な問題とヨットレースのルールには乖離もあり、レースの実行委員会側ではレースのルールのみをチェックしています。

一方、外洋特別規定(OSR)では、
【3.29】 通信設備、GPS、レーダー、AIS の項で船舶用トランシーバー(marine dadio transcever)が必要とあり、これが国際VHF無線機の場合は、そのための免許が必要になります。

これも、無線機と電源やアンテナを含めた”設備”に対する「無線局免許状」と、それを操作する”人”に対する「無線従事者免許証」の2つが必要で、特に「無線従事者免許証」の方は、国際航海になると「第一級海上特殊無線技士」の資格が必要になります。一般的には、「第二級海上特殊無線技士」なので、これもなかなか大変。

その他、イーパブ(EPIRB)をはじめとし様々な通信機器を搭載することになりますが、そちらは包括免許になっていて携帯電話と同様いちいち従事者免許は不要。
といっても、なんやかやと様々な証書がいっぱいあります。

今回「日本-パラオ親善ヨットレース」で使用される通信機器については、レースの「通信規
定」が発表されてからまたお伝えします。

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