レース準備は忙しい

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11月ももう最終週。
来月、12月29日の12時55分「日本-パラオ親善ヨットレース」の予告信号(Warning signal)が揚がります。
これがスタート信号の5分前。

11月1日に公開された帆走指示書には、12.スタートの項で、
「レースは RRS 26 を用いて……」
とあるので、この後、4分前に準備信号(Preparatory signal)が揚がり、1分前に準備信号が降下。そしてスタートとなります。
これが、【RRS 26】に書かれているスタートの手順。
ということで、「日本-パラオ親善ヨットレース」のスタートは、

12月29日の午後1時

ということになります。

さらに、セーリング競技規則(RRS)では、スタート4分前の準備信号から「レース中」と定義しています。ヨットがスタートラインを切るスタート信号の前に、レースは始まっているということです。


さらにいえば、参加艇からすると、ヨットレースはスタートした時点で半分終わっているとも言います。ここまでの準備が大変だから。

そう、レース準備はすでに始まっています。

レース公示を見てエントリーを決めるまでが第1段階。
その後、艇の整備やクルーの手配。そしてレース海域のチェック。これが第2段階。

さらには、数々の書類を提出しなければならず。
いやこれが、出艇申告書(乗員登録)だけじゃないんです。

PHRF 申告書
レーティング証書(写し)
OSR Cat-1 申告書
日本パラオレース特別規定申告書
保険証書(写し)
乗員の JSAF 会員番号
主催者-競技参加者 契約書
支援艇利用申告書
自己経歴申告書
健康に関する自己申告書
安全講習の受講証明書(写し)
船舶検査証(写し)
無線局免許状および無線従事者免許証(写し)

と、書き出すだけでも大変。

特にこのレースは、国内イベントでは久々の外洋特別規定(OSR)カテゴリー1となっており、それに合わせて艇や人の準備で一苦労。
検査も、
インスペクション-1 2019/9/1-12/20
インスペクション-2 2019/12/21-12/27
と2回に分けてスケジュールされています。

「外洋特別規定(OSR)2018-2019 申告書(モノハル・カテゴリー 1)」
「特別規定 申告書」
の書式を埋めるのですが、これでも簡易にリストアップしたもので、原文はこちら。
「World Sailing Offshore Special Regulations 2018-19」

これ、準備してインスペクションを受けるほうも大変ですが、インスペクションする主催者側も大変です。
本来は自己申告すべきことなのですが、スタート直前になって手配が間に合わないような不備があったり、フィニッシュ直後の検査でうっかりミスが発覚し失格になってしまっては気の毒と、こうして事前に2度に分けてインスペクションが行われます。


そもそも、実行委員会が立ち上がりレースの準備が始まったのは今から1年以上前の話。
当初は、臨港パーク前辺りからタートし、横浜ベイブリッジをくぐって南洋へ、と聞いていたので、こんな記事書いちゃったのですが。

結局、港内からスタートしてセーリングで走るには、いろいろな制限をクリアしきれなかったようで、11月1日に公示された「帆走指示書」には

スタートは横浜ベイサイドマリーナ沖

となっています。

横浜港は港則法では京浜港と定義され、東京区、川崎区、横浜区と3区画のうちの一つ。
港界は、横浜ベイブリッジの内側は当然として、その沖合も続いており、南も横須賀港の港界と接しています。その内側は全部港内。

港則法では、第十六条の2で、

帆船は、港内では、帆を減じまたは引船を用いて航行しなければならない。

とあり、港内でヨットレースを開催するには、いちいち許可が必要なのです。

ここからスタートできたら……ってやっぱり難しいんですね

ヨットレースが盛んな大阪湾は西宮沖の海面も港則法上の港内にあたり、事前の申請と許可が必要で、天候をみて予定していたオフショアレースをインショアレースに代えるというような変更ができないんだそうな。

「日本-パラオ親善ヨットレース」のスタート海面は横浜ベイサイドマリーナ沖になりましたが、12月29日の11時~12時前後(予定)には、みなとみらいエリアの海面で、参加艇によるパレードが予定されています。
横浜ベイブリッジの下をセーリングで通過することも計画されており、たくさんの人たちがパラオへ向かうヨットを応援できる機会になるといいですね。


と、レースの主催者はなにかと大変。
主催者といっても、プロのイベント屋ではありません。関わっている人ほぼ全員が他に仕事を持っていて、趣味でレースの企画と運営にあたっています。
ちょっと語弊があるかもしれませんが、高校の文化祭みたいな感じ。
動くお金はまったく違いますが。

特に「日本-パラオ親善ヨットレース」では、ヨットレースだけではありません。
まず、並行してジュニア用のOP級ヨットをパラオに寄贈。
指導には、日本国政府が推進するスポーツ国際貢献事業「SPORT FOR TOMORROW」の一環として、日本セーリング連盟からセーリングのコーチを派遣しています。

かつてはセーリングカヌーで島から島を帆走りまわっていたミクロネシアの人々ですが、今ではセーリングの技術はすっかり廃れてしまっているようです。

パラオの主要産業は観光業。
ダイビングの聖地として知られますが、ここでヨットを覚えた子供たちが成長した将来、観光資源にセーリングが加わるかも。

また、海洋の保全と持続可能な利用をテーマに、来年(2020年)8/17-8/18にパラオで「私たちの海洋会議(Our Ocean Conference)」が開催されるそうです。

これに関連して、「Sailing towards a plastic-free ocean」としてJAMSTEC(国立研究開発法人海洋研究開発機構)が行う海洋プラスチック調査に協力することにもなっています。

と、ヨットレース以外にもなんだかいろいろありまして。
スタートにはパラオのトミー・レメンゲサウ Jr.大統領も来日することになっています。

と、ヨットレース以外にも、これらの手配でももう大変。
……って、ワタシは横で見ているだけですけど。

そんな準備の日々がもう1年続いているわけで。
スタートまで約1ヶ月。参加艇も、主催者も、最後の大詰め。大忙しの日々なのです。

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